【弐】

「昨日電話で話した通りだ。

香港から弾が届いた。注文通りの仕様にはしたが保障は持てんと書いてあるがな」

 彼の指差す包みの裏に、確かにその様な意味合いに読める中国語が走り書きされている。

「…心許ないお話ですこと」

「まあ、気をつけろという程度の事だろう。昨日多摩川べりで幾らか貰って試してみたが、特に具合の悪い事もなかった。遠くを狙えば見事にお辞儀をしてしまう他にはな」

「ええ、わたくしにはそれであつらえ向きですの……何かとお世話をして頂いて大変痛み入ります、八神さん」

「ああ…礼ならあれに言ってくれ」

 八神氏が顎をしゃくった先で、書類を [めく]っていた洋服の女がこちらを見る。いつか、 [レイ]と名乗ったその華人は、いつ見返してもこちらが気恥ずかしくなる程艶かしい物腰をしている。

「ともあれ実際の程は君自身で見ておいてくれ…俺のはもう 旋条[ライフル]が磨り減っていてな……親父に譲られた時からだが。

出来れば次は君のと同じ寸詰まりに差し換えたいが、いかんせん先立つ物というやつがない」

「先だっても申しましたでしょう、その位のご都合はいたしますから」

「金で義理を売られるなというのがその親父様の口癖でな。まあ、今の所は気持ちだけ有り難く貰っておこう」

 

●黎 翠玲(Lai Cui-ling)[八神の助手] 声:小林和実

艶やかな物腰の華人女性

新宿界隈で興信所を開いている男、八神と共に史絵に探偵業の心得を授けてきた。