【四】

「…なんだ、やっぱり帰ってたのか」

振りかえると、開け放していた扉の陰から弟が頭を出している。

「ええ、先程戻りました」

二年程前に実家を離れた私の元にこの (たかし)が来てから、そろそろ半年になろうとしている。中学を出て、高田馬場の私塾に通い始めた事がその切っ掛けだった。

「今日は結局出席なさらなかったの」

「ああ、結局明日まで全部休講だって掲示があってね。戻って来てから大人しく自習していたよ」

「そう…その様な事なら姉様のお供をして下されば宜しかった」

「え、新宿で何かやっていたのかい」

「いいえ、そう言う事ではなくて」

五つ歳の離れたこの弟は、同年の子達と較べて見劣りもなければ抜きん出た所も見当たらない、尋常な、といえばそれまでの風采をしている。

とは、あのすみ江などに言わせれば姉ならではの愚昧な見方であるのらしい。

(いず)れにしても、私自身に取っては何を不足に思うことも無い弟である事に違いはなかった。

 

●ヒロイン:史絵(ふみえ) 声:松永雪希

婚約者を事故で亡くし、その後ふとした切っ掛けで探偵業の世界へ魅入られた娘。

令嬢然とした振る舞いの中に、理知と毅然さを隠し持つ女性。

父親から譲られた二挺の銃砲を愛し、細腕の身をその巧みな扱いで守り続けている。